旅行先で調子に乗ってはしゃいで、ものすごい勢いで顔面を強打しました。
鼻は当たっていないはずなのに鼻血ブーで当日は視界がぼやけて焦点が合わずに吐き気もする状態、翌日には顔の半分が痺れて目の下が紫色になったので、翌々日に病院に行きました。(※脳震盪の可能性があるので本来はすぐに病院に行くべきだそうです)
結果は眼窩底骨折で、私は手術することになりました。
同じように眼窩底骨折の診断を受けて手術をするのか経過観察か迷っているのお役に立つことがあればというわけで、手術後の経過や後遺症などもまとめてみました。
目次
眼窩底骨折(眼窩吹き抜け骨折)

眼窩底骨折とは?
眼窩内容に直接強い外力が加わったときに,眼窩骨壁のなかで最も弱い下壁が,上顎洞内へ抜け落ちるように骨折した状態。打抜き骨折ともいわれ,眼窩内の脂肪組織が骨折部に脱出して元に戻らなくなるかんとん (嵌頓) の状態になるため,眼球の陥没と運動制限,特に上下運動の著明な制限が起る。
出典:コトバンク
病院に行った時の症状
- 顔の半分だけが痺れている
- 上を向くと目が痛い
- 腫れはわずかで、目の下は紫色
脳神経外科でCT検査を受けて眼窩底(吹き抜け)骨折との診断が下りました。
CTを見せてもらうと底に穴が開いたみたいな感じになっていて、目の周りの脂肪組織などが下の空洞になっているところに落ちてしまっているそうです。
そのため、少しだけ目が窪んでいると言われました。
ちなみに眼窩底骨折は、鼻をかむのは絶対NGですので注意して下さい。
痺れは神経を損傷しているためで、上を向くと痛いのは上を向く時に使う筋肉に折れた骨が引っかかっていることが考えられるといわれました。
さらに今は腫れがあるからそれほど分からないけど、腫れがひくと今より目が窪む可能性が大いにあると言われました。
紹介状を書いてもらって今度は大きい病院の形成外科を受診することに。眼科で視力などの検査も受けました。
眼科では、視力や眼圧など健康診断で行うような検査の他に、眼球運動を見るhess検査などがあります。
瞳孔を開く目薬も点しましたが黒目いっぱいまで瞳孔が開いて不思議な感じです。眼科は痛くないし検査はストレスフリーでした。
眼窩底骨折の手術適応とは?
手術適応とは「手術をした方がメリットがある状況」という意味で、眼窩底骨折の場合は以下のような症状が手術適応です。
手術適応
- 眼窩壁の骨折があっても、複視や眼球陥没などの症状が無ければ手術はしません。
- 複視の多くは骨折部の腫れや出血が吸収されると改善してきます。訴えが複視だけで、CT検査で問題が無い場合には、改善状況を見てから手術するか否かをきめます。
- 外見上の眼の落ち窪み(眼球陥没)の修正には原則として手術が必要です。
出典:日本形成外科学会
状況によっては緊急手術が行われる場合もあるそうです。
私はざっくり以下のように説明を受けました。
眼窩底骨折 主な手術適応
- 物が2重に見える複視が解消しない
- 目が窪む眼球陥没
当時のわたしの状態や、検査結果はこんな感じです。
視力や目の様子
・視力や物が2重に見える複視はない
・上を向くと目がズキっと痛むものの眼球運動も問題ない
・眼球陥没はごくわずかでパッ見では分からないものの、良く見るとわずかに目が窪んでいる
痺れ
・左の上唇から左目にかけて痺れがある
・口の中も痺れている
手術すべきかズバリ聞いてみた
手術した方が良いのかと率直に聞いてみたところ「視力に問題がないので絶対に手術すべきとまでは言えないが痺れもあるので、手術した方が良いのでは」という回答でした。
手術をした場合としなかった場合のメリット、デメリットを教えてもらいました。
手術をした場合
メリット
・手術しないより眼球陥没(目の窪み)は防げると思われる
・痺れが改善すると思われる
デメリット
・視神経などに近い場所の手術のため失明などのリスクもゼロではない
・手術しても、痺れや眼球陥没が100%完治するかは分からない
手術をしない場合
メリット
・メスを入れないので失明などのリスクがない
デメリット
・腫れがひくと、今よりもう少し眼球陥没する可能性がある
・痺れは恐らく現状のまま残る
こればっかりは一言で眼窩底骨折といっても人によって症状も違いますし、して良かったと思うのか、しなければ良かったと思うのかは後遺症なども含めて結果論ですので、どちらが良いかっていうのは本当に難しいですよね。
どちらにしても納得できるまで熟考するしかないかなと思います。
と言いつつも、わたしはというと、なんとなく会話の流れで手術することになってしまいました。
軽い感じで「もし手術するならいつ頃ですかね?」って聞いてみたんです。
手術には他の大学病院からもう一人先生が立ち会うとかで、その先生の都合や、手術室の空き状況などを手際よく確認され「手術日ですが〇月〇日でどうですか?」って言われたんです。
「あ、じゃあ〇月〇日で」って言ってしまいました(笑)
そんな感じでなんとなく手術することになったのですが、今度は人工プレートを使うか、自分の骨を移植するかという話になりました。
人工プレート?自分の骨を移植する?
要は折れたところに代わりに何を入れるかって話です。
私の手術は人工プレートも自分の骨も、一度入れると取り出す必要はないとの事でした。
教えて頂いたメリットとデメリットは以下のような感じです。
人工プレート
メリット
・メスを入れるのは目の下、一か所のみで済む
デメリット
・人工のため、ごくまれに体に馴染まないことがある(適合しない)
自分の骨を移植
メリット
・自分の骨なので体に馴染む(適合する)
デメリット
・自分の骨を削る必要がある
結局、検査を進めていくうちに結構盛大に折れていたらしくサイズの合うプレートがなさそうということで自分の骨を移植することになりました。
どこの骨を移植するのかと言えば「自家腸骨」つまり「骨盤」です。
削るのは左右どちら側でも良いそうですが、しばらくは痛みがあるので車の運転するなら利き足じゃない方を削りましょうということに。
腰の左横の一番出てる辺りの骨盤を削りました。
手術準備~手術当日
怪我をした当日から起算して10日目には手術と結構バタバタでした。
手術が決まってからは、病院に行ったのは1度だけで手術前検査として採血などと、麻酔・入院についての説明などもその時に受けました。
前日に入院して、手術にのぞみました。
手術当日
手術の少し前に点滴をするのですが、その点滴がぶら下がった器具(上の画像に写っています)を自分でカラカラ押しながら歩いて手術室に向かいます。
同行してくれた看護士さんが、緊張しないようにと明るく会話をしてくれているのがひしひしと伝わり、気の利いた事でも言わないとと思ってトークに励みました。
「ものすごくお腹ペコペコなんで手術終わったらご飯楽しみですー。」
「ほんとですか?食べない方も多いんですが、手術終わったら食べます?取り置きしてもらいましょうか?」
「わぁ。楽しみー」
と、私なりの(大丈夫ですよー)というリップサービスのつもりでしが、このリップサービスあとで後悔しました。
手術は、全身麻酔です。
呼吸器を付けて、それまで打っていた点滴の袋に麻酔が入るとすぐに冷たいものが広がっていく感覚があったのですが、もう記憶はないです。
急に「起きて下さい!手術終わりましたから、病室に戻りますね」って起こされた感じです。
ビックリするほど眠くて一度は目を開けたんですが、自然と目が閉じてしまう。
声は耳に入るのですが、どうしても目が開かない。
眠すぎて朦朧としながら病室に運び込まれ自分のベッドに寝かされたのですが、今度はありえないほど寒い。
もちろん病室の温度はパジャマ一枚で快適に過ごせる適温のはずですが、尋常じゃないほど寒い。歯をガチガチいわせて震えていました。
用意してくれていた電気毛布の温度をMAXにして貰って、少し寒さが落ち着いて、またウトウトしていると知らない看護士さんが来て、
「ご飯食べるって聞いてたんですけど?ご飯ですよー。ご飯。食べるんですよね?」
看護士さん、引き継ぎ完璧でした。
「・・・今?」っていう。
電動ベッドを無理やり起こして、何度も意識が飛びそうになるほどウトウトしながら平らげて横になりました。(きつかった)
あと目が乾燥しているのか涙腺が原因か分かりませんが、目を開けてると煙が滲みた時のような痛さがあり、片目だけ涙が止まりませんでした。
私は確か15時くらいの手術で、手術は2~3時間ほどだったと思います。
手術後は翌朝までそんな感じで寝てるか、ずっとウトウトしている状態のため時間の経過などもほとんど分からず翌朝を迎えました。
当日は痛みよりも眠気です。
手術翌日~退院
上の画像のような感じで、涙袋のあたりを目のラインに沿って切ってありました。
実際に切ってみて、結構奥の方まで折れていたそうですが奥は視神経が多く失明のリスクが高いため奥の方は手付かずだそうです。
翌日
翌日は痺れもありますし、そこまで顔の痛みは感じませんでしたが、骨盤の削ったところがめちゃくちゃ痛い。
足を上げる動作をするたびに激痛が走りますのでベットに上がるのも一苦労。
手術の前に、血栓を予防するための太ももまである”メディキュット”みたいな弾性ストッキングを履いていましたが、
脱げない・・・。
くるぶしまで、ずり下げることは出来るのですが足を上げると痛みがあるので足を抜けないんです。
もういいやと思って、足首にストッキング巻き付けたままで数時間過ごしました。
翌日から歩くことは出来ますが足を前に出すと激しい鈍痛のため、手すりにつかまりながら後ろ向きに足を滑らすようにしか歩けず、一日中ムーンウォークしていました。
数日間は骨盤の削ったところも、今まで見たことない打ち身のようなドス紫色でした。
日を追うごとに、痛みは回復していくのが分かりますが顔は腫れて、骨を移植した目の下は紫色ですし、目の高さも違うような感じ。
顔が左右で別人のようです。
3日目くらい
3日目くらいから前向きにソロソロと歩けるようになり、シャワーも解禁されました。
入院は1週間ほどと事前に聞いていましたが、全てが順調に回復すれば最短で術後5日の退院もあり得ると聞き、順調アピールのためにウロウロとナースステーションの前を歩きまくってました。
ちなみに、うすうす気づいてはいましたが、この順調アピールは全く意味がないです。
単純に入院中に2度あった診察の時に「もう大丈夫なので退院したい」と切に訴えたのが効いて、手術から5日目に抜糸し、そのまま荷物をまとめて無事5日で退院できました。
退院時の状態
今から思えば、目の周りは黄色く変色して完全アウトですが、当時はこれなら化粧で隠せると思って退院当日この顔で遊びに行きました(笑)
少し足を引きずるような感じになるものの、静かに遊べる程度には回復しています。
あと退院当日、2時間ほど車に乗ったのですが普段は車酔いはしませんが、すっごく酔いました。
それから大きな声では言えませんが、退院当日にお酒を一杯だけ飲んでぶっ倒れてます。
特に注意は受けていませんでしたが、退院当日はお酒は控えた方が良いと思います。ほんとに。
退院後~1ヶ月頃まで
退院が土曜日だったのですが、週が明けて月曜日からは仕事に復帰しました。
テキパキとはいきませんが日常生活は普通に送れます。目の下の縫い傷は、それほど目立ちません。
1ヶ月ほどで初対面の人なら手術したことに気付かれないほどにはなりました。
ただ元の私の顔を知っている友人などは、微妙に以前と顔の雰囲気が違うと言われました。
確かに左右でちょっと顔の雰囲気が違います。
正面から見ると目立ちませんが、下から見ると頬骨あたりが腫れたような感じで少し盛り上がっているのと、目の下の骨を移植したところも触ると硬くて盛り上がった感じです。
口の中の痺れは緩和してきました。
退院1ヶ月~半年
退院後は結局3回、通院しました。(本当は半年目あたりに4回があったのですが面倒になって最後は行きませんでした)
骨を移植した目の下は2~3ヶ月くらいまで硬く、そこから徐々に柔らかくなっていきました。
2、3ヶ月目辺りまでは、時々目の下がピリっと痛む時があるので病院で聞いてみると手術の時に細かい神経を切ったのが修復されているためだとの事でした。
見た目はかなり落ち着いて正面から見るとほぼ変わりないかなという感じです。
痺れも徐々に痺れも解消して範囲が狭まってきました。
削った骨盤を下にして寝るのは恐怖もあってなかなかできず、仰向け寝が上手になりました。
現在(10ヶ月)の痛み・痺れ・後遺症は?
7、8ヶ月を超えたあたりから良くなっているという感じはないので、ここら辺が限界かなと感じました。
目の窪み・傷跡などの見た目
見慣れもありますが、言わなければ分からない程度に落ち着きました。
その日の調子にもよりますが、二重だったのが奥二重気味にはなりました。
正面から見た時、ほん少し左の目が小さいようにも思いますが、自分的には許容範囲内です。ちなみに横から見た方が目の窪みは目立ちます。
傷跡はうっすら目の下にシワが入った程度でほぼ分かりません。
あと手術によるものかは不明ですが左目はクマがほとんどできなくなりました。(不思議)
痺れ
痺れは完全には取れませんでした。
目の下のちょうどクマが出来るあたりは感覚がほとんどないのと、なぜか鼻の脇を触ると目の下がムズムズします。
日常生活に困ることもないので、普段は気にしていません。
もともとは顔の左半分が広範囲で痺れていたことを思えば、かなり改善しました。
骨盤
切ったところの傷跡はかなり薄く全く目立ちません。
現在は痛みもまったくありません。
費用は?
手術前検査や手術後の通院44,700円
手術と入院で総額554,124円
健康保険の3割負担で、食事代など含めて総額178,223円でした。
手術をして良かった?
私自身はして良かったと思います。
手術しなかった場合より恐らく目の窪みは防げたであろうという希望的観測と、痺れの範囲が大幅に改善したというのが大きいです。
ただ、もし手術をしなかった場合がどうかというのは分かりませんので、もちろんどちらが良いかは判断できませんが。